ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
妹に対して困惑の表情を浮かべた兄へと顔を向け、「ダンお兄様」と虚に話しかける。
「私、この人生飽きましたわ」
ロザンナからうんざりと放たれたひと言に兄のダンは目をむき、すぐさまドアに向かって大声を出す。
「父さん、母さん、早く来て! ロザンナの馬鹿が悪化した!」
「……ばっ、馬鹿ですって? 聞き捨てなりませんわ!」
ロザンナはダンを掴みかかろうと、小さな手を伸ばす。正確に言うと、十六歳の手と比べたら小さい九歳の手。
「なんだよ、まだ子供のくせに人生飽きたって。突然変なこと言い出すから、頭の打ちどころが悪かったのかもって思うだろ。……って、階段から落ちたことはちゃんと覚えているか?」
ダンはロザンナの手を難なく避けつつ苦笑いを浮かべていたが、徐々に真剣な面持ちへと変化させた。
もちろん覚えている。マリンと揉み合いになって階段から転げ落ち、ぶつかった台座に乗っていた胸像が落下し、押しつぶされた。
でもそれは十六歳の出来事。ロザンナはやや間を置いてから、ダンに頷きかける。
「ダンお兄様にお渡ししたい物があったから、はしゃいで階段を降りて行く途中で、足を踏み外して、華麗に転げ落ちました」