ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「アーヴィング伯爵ではありませんか。王子の誕生日ですよ? もちろん馳せ参じますとも」
スコットとの仲の悪さがひと目でわかる男性の傍には、十二歳のマリン。
彼女同様、ロザンナも父親の隣で大人しくしていたが、不意にアーヴィング伯爵から視線を向けられ、思わず息をのむ。
「彼女が自慢の娘さんかな。随分と出し惜しみされていた」
しかし、続けて飛び出した嫌味に、ロザンナは咄嗟に顔をうつむけ、わずかに唇を噛む。
「そんなつもりは全くありませんよ」とスコットは言い返したけれど、実際アーヴィング伯爵の言う通りだ。
十回も人生を繰り返せば、当然見知った顔が多くなる。
そのため、このような場で緊張することはもうなくなったが、最初のうちは違った。人の多い場所に出るのがとても苦手だったのだ。
それはスコットのせいでもある。社交界デビュー後、スコットはロザンナが社交場へと赴くことに強い難色を示した。
言葉ではっきり言われなくても、それは禁止されたと同じことで、ロザンナの記憶にある賑やかな場は、この場とアカデミーでのパーティーくらいだ。
スコットはロザンナこそがアルベルトの花嫁にふさわしいと盲信していたようで、社交場に行って悪い虫がつくことを警戒していた。