ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「アルベルト王子への挨拶がまだだった。失礼する」
それだけ告げて、急ぎ足でアーヴィング親子の元を離れた。
掴まれた肩が痛くて「お父様」と抗議すると、じろりと鋭い眼差しが向けられロザンナは顔を強張らせた。
「娘をあんなに褒め称えたら、こちらの負けを認めたようなものではないか。私は絶対にそんなの嫌だぞ」
ぶつぶつ文句を呟く父へ、ロザンナは小さくため息をつく。
「何に負けると言うのですか? 誕生日を祝う場ですもの、アルベルト様だって来客がいがみ合っているより、楽しく笑っている方が良いに決まっているでしょ?」
この場が花嫁選びの第一関門だと聞かされていないことを逆手に取ってロザンナが言い返すと、スコットは「うぐぐ」と小さく呻いた。
本当のことを言おうかどうか苦悩する様子を冷めた目でロザンナが見つめていると、突然「どうしましたか?」と声がかけられた。
スコットはパッと表情を輝かせ、逆にロザンナは息を飲んで声のした方へと爪先を向ける。
「アルベルト王子! 十二歳のお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
アルベルト王子は大袈裟にお辞儀をしたスコットへと、ふわりと笑みを浮かべる。