183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
「自分が苦しんできたから、柊哉を蹴落としてもいいとでも言うんですか」

「それは……」

「恨みを消せとは言いませんが、後からの仕返しは卑怯者がすることです。嫌だと思ったなら、その時に言わないと。これ以上は我慢できないと、泣いてでも訴えないと。それができなかったのは、柊哉のせいじゃない。あなたが臆病だったせいです」

響子の息をのむ音が聞こえた気がした。

同情されて然るべきだと思っていたのに、健気な子供の頃の我慢さえ否定され、返す言葉を失ったようだ。

啓介は感心したような目を真衣に向けて変わらず黙し、柊哉は……目が潤むのを感じ、慌てて瞼を閉じた。

(真衣は、誰が相手でもはっきり言うんだな。専務の妻を怒らせて得はない。社員の立場が危うくなる恐れもある。それでも我慢できずに食ってかかるのか。俺のために。それなら俺は……負けられないな)

柊哉の口元に自然な笑みが浮かぶ。

それを消して真顔を作ると、秘書課の中に踏み込み、ドアを閉めた。

「声が大きい。廊下まで丸聞こえだ」

三人の注目を浴びる柊哉は、まずは書類を啓介に渡した。

< 160 / 233 >

この作品をシェア

pagetop