183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
それは社内で見る好青年を装った彼とも、三日前の本性を表した時とも違っていた。

(おばあさんに対しては優しいんだ。これも嘘偽りのない彼なのかな……)

急に雰囲気が和らいだように感じた。

真衣と老人ふたりも、それぞれの緊張が解けたように笑みを浮かべる。

「私も聞かせてほしいです」と促せば、祖父と絹代が照れながら教えてくれた。

それはなかなかの大恋愛。

真衣の祖父、勲は当時、商業高校に通う学生だった。

実家が裕福ではなかったため放課後はとある商社の社長宅で、まき割りや荷運びなどの肉体労働をし、学費の足しにしていたという。

その社長宅のご令嬢が、絹代。

勲よりひとつ年上の高等女学院の三年生だった。

自然と惹かれ合ったものの、身分違いといってもいいふたりである。

こっそりと清らかな交際をしていたのだが、ある日、その関係が彼女の父親にバレてしまった。

娘に近づくなと追い払われ、勲は社長宅には出入りできなくなる。

けれども恋心は募るばかりで諦められず、ふたりは神社の楓の木の洞を使って手紙を交換していたそうだ。

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