183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
どうやら机の引き出しにしまっていた勲の手紙を、使用人の誰かが絹代の父親に渡したらしい。

駆け落ちなどをすれば、勲を雇用する者がいないよう、日本中の会社に圧力をかけると、父親に脅されたそうだ。

絹代が大人しく親の決めた相手と結婚すれば、商業高校卒業後に勲がいい商社に勤められるよう裏で手を回してやる、とも。

それで絹代は泣く泣く勲との別れを決め、他の男性のもとへ嫁いだという話である。

しみじみとした声で、勲が言う。

「わしがそれを知ったのは、三十の時だ。社長宅の知り合いの使用人に、偶然会ってな。絹ちゃんが約束の場所に現れなかった理由を聞かされたんだよ。その時のショックといったらもう。駆け落ちの夜よりつらかったなぁ」

真衣の目には涙が滲む。

裏切られたと思っていた、かつての恋人に、実は守られていた。

十年以上たってからそれを知らされても、後悔が押し寄せるだけであろう。

勲はさらに続ける。

「これも偶然で、その話を聞いたひと月後に、絹ちゃんに会ったんだ。百貨店の展望レストランから出たところでな。絹ちゃんは入るところだった」

「なにを話したの?」

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