183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
ダイニングの椅子に腰を下ろした柊哉は、黙々と食事を口にする。

(うまい。けど、寂しいな。なぜだ?)

ひと月前まで独り暮らしであったというのに、会話のない静かな食卓を寂しいと思う理由がわからない。

真衣と暮らし始めてからというもの、今までとは感情の動き方が違う気がして、戸惑う時がある。

知らない自分が現れたような心持ちだ。

(いや……違うな。この寂しさは知っている。そうか、あの頃と状況が似ているから、寂しいと思ったのか)

思い出しているのは、幼い頃のこと。

柊哉は小学校二年の春まで母親とふたり暮らしで、住まいこそ2LDKの立派なマンションであったが、贅沢はせずに庶民的な生活をしていた。

なぜふたり暮らしかというと、母は柊哉の父親の妻ではなく、愛人であったからだ。

母親の性格は地味であったと思うが、職業は銀座のホステスだ。

柊哉の父親とも店で知り合い、恋仲になったと思われる。

母は十六時頃になると綺麗に着飾って、出勤する。

夕食は柊哉ひとりのことが多く、テーブルには手作りのおかずがいつも四、五品並んでいた。

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