183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
少し甘めで照りのある肉じゃがも、よく出されたように思う。

マンションはたぶん、父が母に買い与えたもので、金銭的には困っていなかったと思うが、将来的に縁が切れた場合を考えてなのか、母は散財を嫌い、豪華な食事は作らなかった。

けれども、どれも美味しく、愛情を感じる手料理であった。

ひとりで夕食を取らねばならない柊哉への、精一杯の愛情表現であったのかもしれない。

そんな母が交通事故で急死したのが、柊哉が七歳の五月のことで、それまで数回しか会ったことのなかった父親に引き取られた柊哉は、父の家族と一緒に暮らすようになったのだ。

自分のために並べられた手作りのおかずの数々と、それをひとりで食べているこの状況が、幼い日の自分を思い出させ、寂しいと思ってしまった原因のようだ。

(真衣のせいではない。俺が食べ終えるまで向かいに座ってろとは言いたくない。一時の妻に甘えたくもない。ただ、母さんの命日が近いから、思い出しただけだろう。今年の墓参りは土曜にするか……)

食べ終えて、食器は軽くすすいでから食洗器に入れる。

その頃には、真衣への苛立ちは四分の一ほどに減っていた。

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