183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
重役なのに偉ぶるところがなく、年齢問わず社員に好感を持たれているように思う。

顔よし、スタイルよし、性格よしの三拍子に加えて、有能でもある。

なにより御曹司だから、シンデレラストーリーを夢見る女性社員は多い。

真衣も、恋とまではいかずとも、密かに憧れの気持ちは持っていた。

彼が同席する会議では、うっとりするほどいい男だと、眼福にあずかってきたのだ。

そんな乙女漫画のヒーローのような副社長のイメージが、次の言葉で完全に崩れる。

『うるさいな……失敬。君には端的にわかりやすく伝える必要があるようだね。別れたいと思った理由は、ウザイ、それだけだ。手切れ金も渡しただろう。受け取ったんだから、二度と連絡しないでくれ』

(ウザイって……ひどい)

人当たりのよい好青年ぶりは、演技だったのかと思うほどの、辛辣なひと言である。

言われた当人でもないのに強い衝撃を受けてから、真衣は、まずいものを聞いてしまったと我に返った。

(副社長に気づかれる前に、ここを出よう)

覗かせていた顔を引っ込めドアへと引き返そうとしたが……動揺から爪先を配管に引っ掛け、『キャッ』と声をあげてしまった。

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