元カレ社長は元カノ秘書を一途に溺愛する
「俺の運転、大丈夫か?」
険しい表情のまま窓の外を見る杏奈を心配そうに瑠衣が見る。
「前、見てください」
「赤信号だから」
そっけなく返事をする杏奈。

「あんまり顔色よくない」
すっと伸ばした瑠衣の手が杏奈の頬に触れそうになり、杏奈はとっさにその手から離れようと距離をとった。

瑠衣の伸ばした手が遠慮がちに宙に止まり、元の場所へと戻っていく。

「大丈夫です。」
「酔ってないか?」
「酔ってません。」
「寒くない?」
「平気です」
何を言っても距離を保とうとする杏奈に瑠衣は困ったように「そっか」と力なく笑った。
< 18 / 330 >

この作品をシェア

pagetop