【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「もう消えちゃいそうだよ、良かったね」
言葉にして少し寂しく思った。そしてそのことを恥ずかしく思う。
「なんだか寂しいな」
シュテルが答えてハッとする。同じように考えてたことが少し嬉しくて、それ以上に気恥ずかしかった。
「痕が残らなくて良かったじゃない」
自分の気持ちを悟られたくなくて、反対の言葉を口にする。余ったオイルをいつものように、自分の手に塗り込めた。乾いた手の甲が潤って気持ちが良いのだ。
「残っても良かったのに」
「また、そんなこと言って」
「名誉の負傷だよ」
「背中の傷なんか不名誉でしょ」
「ううん 大切なものを守った証だ」
真剣な声に驚いてシュテルを見れば、真面目な顔をして私を見ていた。