【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「……そう」
思わず目をそらす。上手い言葉が見つからない。
シュテルは小さくため息をついて立ち上がった。
「お茶入れる」
「うん」
最近はオイルを塗った後、シュテルがお茶を出してくれるのだ。それを一杯飲んでから、部屋に戻るのが習慣になっている。
私がソファーに座ると、シュテルがその前にお茶を置く。
何故だか、これが緊張するのだ。
日中学校内で会う時は平気だ。自分の部屋で、フェルゼンと三人でいるときも平気だ。それなのに、シュテルの部屋では緊張する。シュテルと二人きりになるのが、少しだけ怖い。嫌ではないけれど、訳の分からない何かが胸に押し寄せてきてちょっと怖い。
討伐後のシュテルは、なんだか知らない人になってしまったようで緊張する。突然怒らせてしまうし、怒らせてしまう理由も分からないしで、どうしたらいいのか分からないのだ。