【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「ふううん?」
シュテルは意地悪く笑って、ワザとらしく考えてるふりを見せる。
「僕といると困るの?」
「なんていうか、分かんないけど、フェルゼンと一緒なら平気」
「……フェルゼン……」
スウっと空気が冷たくなった気がした。
シュテルがカップをテーブルに置き、肩を組む。
「これは? 困る? いつもしてるよね?」
確かに食堂でもよくされるし、廊下でも気さくにされる。そういう時は全然平気だ。今もまぁ、かろうじて平気だ。
「大丈夫、かな?」
肩を組んだ手が、そのまま私の頬を撫で耳に触れる。思わずビクリと体が震える。あの時と一緒だ。二人っきりでの荷台を思い出す。キュッと胸がおかしな音を立てる。