【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「これは……困ってる?」
「……ちょっと、困る」

 心臓がバクバクいう。本当はちょっとどころじゃない。どうかしてる。変だ。

 シュテルの反対側の手が、私の顎を捕らえて上を向かせた。
 驚いて息を飲む。
 シュテルの顔が近づいて、鼻に鼻先をこすりつけられた。

「やめてよ……」
「これはダメ?」
「ダメ」
「なんで? 嫌なら逃げるでしょ?」
「なんか、魔法使ってるよね? その魔法やめて? 動けなくなるの、怖いよ」

 そう言えばシュテルは驚いたように目を見開いて、天使のようにニッコリと笑った。

「魔法なんか使ってないよ。体内になんて影響できない。ベルンだって、流れた血は凍らせても、中の血までは凍らせたり出来ないでしょ?」

 優しい先生のように解説してくれるけど。
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