【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「冗談でも、お世辞でもなく、お前は魅力的だ。俺はいちいち言わないが忘れるなよ。変なこと気にして傷つくことないからな」

 それだけいって手を離す。ドアが締まる。
 私は驚いて座り込んだ。

 なんだよ。それ。

 目じりが熱くなる。

 私、傷ついてたんだ。だから、あんなに変な気持ちになったんだ。
 女の部分を自分自身で笑い者にしながら、実際に笑われて傷ついてたんだ。
 フェルゼンは何でもお見通しだ。私自身が気づかない傷にさえ、気がついてそっと温めてくれる。

「なんだよ、知らないうちに良い男になっちゃってさ」

 ジワリと染み込む優しさに、胸が一杯になる。

 今日ばかりは、フェルゼンがモテるのがよくわかった。

 優しくされて嬉しい。
 でも、自分だけ情けなくて、寂しいとも思った。


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