【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

 ベルンが目をこすろうとするから、俺の肩先にベルンの顔を押し付けた。
 気が利かない俺はハンカチなんか持ってなかった。だから、せめて俺の柔らかな夜着を使ってもらおうと思ったのだ。

 ベルンが俺の背に両腕を回した。シャツを固く握りこむ。小さな背中は小刻みに揺れて、あんなに強いと思っていた子が、本当はこんなに小さかったんだと気が付いたら胸が詰まった。
 守ってやりたかった、守れなかった。それどころか、俺なんかのために傷ついた。
 堰を切ったように俺は泣いた。二人で泣いて泣いて泣き疲れて、気が付いたら眠ってしまっていた。

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