【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「ありがとう、フェルゼン様」
唐突にかけられた言葉に驚いて、そして、礼を言われることはないと頭を振る。
「いえ、おれ、や、もともとは私のせいです。すみませんでした」
俺は深く頭を下げた。ブーメランなんかサッサと諦めればよかった。欲しいと強請れば、それくらいのものなら買ってもらえるのだから。執着を見せてはいけなかったのだ。
「ブーメランなんか……」
俺なんかのために無茶させてはいけなかった。
「なんかじゃないわ」
そっと掌に、あのブーメランが押し当てられた。ベルンのつけた氷はすっかり溶けて、乾いて軽くなっている。