【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)

「とても綺麗に出来てるわ。きっと遠くへ飛ぶんでしょう?」

 あの秋空を切って弧を描く姿は美しかった。だから調子に乗って、こんなことになったのだ。ベルンを傷つけて、せっかく一緒に遊んでくれたあの子たちにも嘘をつかせて、迷惑をかけた。

 俺はギュッとブーメランを握りしめた。

 こんなもの!

 その手の上にリーリエ様はそっと手を置いた。

「ベルンが握りしめてたわ。きっとあの子にとっても大切なものなのよ。だから『なんか』なんて言わないで。あの子の前では言わないで」

 俺は言葉を失って、リーリエ様をじっと見た。

 まるでその言葉は、ブーメランじゃなくて俺に向けられたように聞こえたから、胸が押しつぶされそうになる。
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