【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
「ベルンを助けてくれてありがとう」
ありがとう、もう一度リーリエ様は言った。
そして少し困ったような顔をして、小さな小さな声で呟いた。
「私はね、ベルンさえ幸せだったらそれでいいのよ。お父様が何を言おうと関係ないの。正しい貴族なんて知らないわ。酷いでしょう? 駄目な令嬢だって呆れちゃうでしょう?」
俺は慌てて頭を振る。
「でも、俺が」
「前後に何があったかなんて関係ないわ。私はあなたが冷たい水からベルンを助けてくれた。ただそれだけが、とても大切なことなの」
俺は、俺の魔法は、攻撃だけでなく人を助けることもできたのだ。そのことをリーリエ様の言葉で知って、ブワリと温かいものが俺の中に広がった。熱いだけの激しい炎とは違う、柔らかな温もりだ。
俺は握りしめた手を開いて、ブーメランを撫でた。きっとリーリエ様が乾かしてくれたのだと思った。