【電子書籍化】氷月の騎士は男装令嬢~なぜか溺愛されています~(旧:侯爵令嬢は秘密の騎士)
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燕尾服に身を包み、控えめに壁際に佇むベルンは何もしなくても人の目を引く。
女としては長身だが、男にしては薄い肩、小さく締まった腰回りが、燕尾服だからこそ強調される。艶やかな青い髪をいつもとは違った銀の髪留めで一つにまとめ、無表情でダンスフロアを眺める瞳は、宇宙のように深く静かに瞬いている。
ご令嬢はもちろん、老紳士までベルンの中性的な美しさに目を奪われ、ため息をつく。
それなのに本人はみじんも自覚がないから、悪質だ。
感情の読み取れない表情が常で、どんな美女に見つめられても、可憐な姫に話しかけられても、平然とした態度のベルンはクールだと思われている。
でも、本当は違う。
シュテルに話しかけられて、困ったように笑うのを見て、胸がチリチリと焼ける。
はじめてベルンがシュテルに呼びつけられた日から、俺はずっと嫉妬している。
俺はずっと昔からベルンが好きなのだ。
だから、ベルンが王都にほとんど来ないことを良いことに、女であることをあえて隠した。ワザとシュテルに教えなかった。知られたら盗られてしまう、なぜだか子供心にそう思った。
情けないと思う。
でも。