キミの世界で一番嫌いな人。
「どーも、藤城サン」
「…あぁ、」
思わずサッと、秋斗くんの背中に隠れてしまった。
あの日以来だ。
忘れもしない、どしゃ降りの豪雨。
そのときの雷の音は今でも覚えている。
何より幸せな天国を味わって、一気に地獄へ突き落とされた、あの長い1日。
「ずいぶんと楽しそうだね」
「…それはお前だろ」
「そりゃあ可愛いカノジョに会えたら誰だって嬉しいでしょ?」
背中を向けたまま、秋斗くんは私の手をぎゅっと握った。
彼女……。
そうだ、私はこの人の彼女なんだ。
「行こっか、青葉ちゃん」
「…うん」
数ヶ月ぶりに見る先輩は変わっていないけど、少しだけ疲れているような表情をしていて。
目付きが前より怖くなっていた。
秋斗くんに腕を引かれながら通りすぎる一瞬、バチッと目が合った。
「青葉ちゃんお腹空いてない?もんじゃ食べる?」
「…うん、食べたいな」
「じゃあ───」
「ゴホッ…!!」
そんなときだった。
口元を押さえるようにして、苦しそうな咳をした先輩。
はぁはぁと呼吸が荒くなると同時、マスクを通して手のひら付着したものは、真っ赤で鮮明な血。