キミの世界で一番嫌いな人。




「えーっと、ここで冷やしながらかき混ぜて…っと」



お菓子づくりは時間との勝負なのだと。

結局、生チョコに挑戦することになった私。

木曜日の夜、キッチンにて、エプロンをして雑誌を近くに置いて。


ゴムベラで溶かしたチョコレートをすくうように混ぜていたとき、ポケットに入っていたスマホが鳴った。



「コーちゃんっ!元気元気!でもこっちはすっごく寒くてさ、冬は常に氷点下だよ氷点下!」



今月は定期検診がないから、こうして個人的に電話をかけてきてくれた主治医。

定期検診がちゃんとあったとしても、この場所に引っ越してからそれまでより多くなった。


どこからどう見ても、娘を送り出したお母さんだ。



「今チョコ作っててね。驚かないでよコーちゃん!私ね、彼氏いるんだよ~」



電話の先のコーちゃんの声が、どことなく暗いような気がする。


いつものコーちゃんなら「え?騙されてない?」なんて、笑って返事が返ってくるはずなのに。

青葉は騙されやすいんだから、って。



「…え……?」



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