キミの世界で一番嫌いな人。
そんな主治医から発せられた言葉に、手にしていたゴムベラが床に落ちた。
スマホにぶら下がった、クラゲのストラップ。
『お揃いとか初めて。…すっごい嬉しい』
そう笑っていた、大好きで大切な彼氏。
「それは……、輸血すれば助かるの…?」
まさかコーちゃん自らの口からその名前が出るとは思っていなかった。
何度教えて教えてと言ったって、あんなにも口を固く閉じていたのに。
こーいうときに限ってどうして…。
藤城 理久くんが危ない状態なの───なんて。
生チョコ……。
凍らせてココアパウダーをまぶして、でもそれだけじゃつまらないと思って。
上にホワイトチョコで模様づけをするんだよ。
それっぽく箱詰めして、小さなメッセージカードも用意した。
『…助かるわ。ただ、難しいの。親御さんには連絡が繋がらないし、
一緒に住んでる祖母はいるけれど、年齢的にも輸血はできないから…』
つまらない女はいらない、なんて言ってたから。
秋斗くん喜んでくれるかなあって、本当に今は彼のことだけを考えてチョコレートを作ってた。
『心臓に輸血、なんて。赤の他人がやってくれるようなものじゃない』