キミの世界で一番嫌いな人。




「…よう、」



そんな挨拶をされても、どう答えていいか分からない。

なんでそんなにボロボロなの?
先輩、今日卒業式ですよね…?

湊川の卒業生って、毎年そういう感じなの…?



「…卒業……おめでとう、ございます…、」


「…おう」



「よう」とか、「おう」とか。

そんな二つ返事しか返ってこないコミュ力も中々のものだ。


私、ゴミ捨てしなくちゃ。

これが終わったら、はやく帰っておばちゃんが用意してくれたお昼ごはんを食べるんだ。


でも───…、



「……良かっ、た……っ、」



先輩が、立ってる。
藤城 理久くんが、生きて笑ってる。

もうぜんぶを隠すためのマスクだってしていない。


ゴミ袋はストンと地面に落ちて、両目からもポロポロと止めどなく伝っては頬を濡らした。


ヒーローになれた。

私も、彼のヒーローに。



「───青葉、」



苦しいと、そう意識として反応できたときには目の前は先輩でいっぱいだった。

ぎゅっと首に回った腕は、震えている中でも力強さがあって。


この人ってこんなふうに誰かを抱きしめてくれるんだ…って。



< 305 / 317 >

この作品をシェア

pagetop