キミの世界で一番嫌いな人。




「チビ、ちゃんと掴まってろよ。かなり揺れるだろうからさっ!」



楽しそうに笑いながら男に飛び蹴りを食らわす通称“アキ”こと、廣瀬 秋斗。

グラッと揺れる背中のうえ、男たちがどんどん倒れていく様を見ているだけの私。



「ぎゃぁぁぁーーー!!アッキー!!ちょっと待って!!」


「…お前それわざとなの?」



ドガ───ッ!!ドゴッ!!



「ぐは…ッ!」


「うわぁ……!!」



瞬殺だ……。
さすがとしか言えない。

この人は不良高校のナンバー2なのだと。


すぐにヒラヒラと宙を舞った紅白棒は、ポスッと私の頭に落ちてくる。



「勝者、2-B!!」


「「「うおおおお!!!!」」」



いや、うおおおおお!!じゃないよクラスメイトたち。


私、ただおぶられてただけなんですけど。
何もしてないんですけど。

いいのこれ。
騎馬じゃないじゃん。


おんぶじゃん…。



「1位オメデトウ」



立ち竦む私の頭を、ポンポンと叩くナンバー2。

トモダチはいらない、なんて言ってたけどさ。


ポカッ───!!



「わっ!いった…!なにするんだよ…!」


「さっき殴るって言ったじゃん。これで許してあげるよ」



ねぇ、もう私たち……いや、俺たち。

友達じゃないの?



「次はサッカーだね。お前ベンチだっけ?」


「違うよMF!秋斗くんFWだから俺とタッグ組めば最強だよ!」


「お前すごいよ。練習で1回もボール蹴れなかったじゃん。どっから湧いてくんの、その自信」


「…あのさ、秋斗くん。そこでお願いがあるんだけど…」








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