キミの世界で一番嫌いな人。
「……いま夏だぞ」
「あっ、ごめんなさいっ!おしるこもあります!」
「…そういう問題じゃねぇ」
先輩、前はおしるこを飲んでたから好きなのかなって買っちゃったけど。
…また似たようなことを言われてしまった。
それよりも───、
「く、苦しいんですか…?深呼吸、深呼吸をして、」
これはずっと私がコーちゃんから言われていたこと。
発作が起きたときはまず、落ち着くことを最優先に。
「広大な森林を思い浮かべるんです。目を閉じて…、」
そっと、彼の目に優しく手を当てて伏せさせる。
誰かのぬくもりを目に当てると落ち着くから。
私は小さいときコーちゃんによくしてもらったとき、安心感が生まれて、スーっと楽になった。
「…そうすれば発作は治まります」
───その瞬間。
「っ…!!」
ガシッ!!っと、勢いよく腕を掴まれた。
覗き込むように視線を合わせてくる。
そんな先輩の顔は怒っていて、怒りを必死に抑え込んでいて。
「…やっと、見つけた」
そんな言葉すら怖かった。
いつもの先輩じゃない殺意のようなものが込められている気がして。
…私、そうだ。
いま、女の姿だった。