キミの世界で一番嫌いな人。
でもどうして……。
顔は似てるかもしれないけど、バレてる可能性は低いはずだ。
……いや、違う。
“私”は、男の私じゃない。
彼が見つけたのは、本物の“私”だ。
「…なんで俺のこれが発作だとわかった」
「そ、それは…」
「ただ俺は心臓を押さえていただけだ。息もできるだけ息切れ程度に抑えてた。普通なら発作だとは思われないためにな」
ギリッと、歯を噛んだ先輩。
ぐっと掴まれた腕にも力が込められた。
「お前、なんだろ?」
俺の心臓を奪ったのは───。
そこまで言われなかったとしても、伝わる。
彼の心臓の痛みも、ぜんぶ伝わる。
「きゃっ…!」
ベンチに押し倒されたと思えば、そのまま覆い被さってくる。
すぐに私の首へと両手が伸ばされて。
わかってる、あなたの痛みは一番に知ってる。
それでいていちばん知らないのも私だ。
「…よく似てるよ、お前の兄貴と。お前ら兄妹は毎回甘ったるい飲み物買ってきやがって」
兄貴なんかいない。
妹も違う、兄妹なんかじゃない。
同一人物なんだよ、先輩。