独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
そんな話をしながら医局に戻ると、ソファの設置された小さな休憩スペースで、指導医の蓮見先生と見慣れたスーツ姿の女性が談笑していた。
蓮見先生は四十代半ばにしては若々しく、浅黒い肌にオールバックがトレードマークのイケオジ。
一見遊び人風だが外科医としての腕は確かで、天才と呼ばれる小田切先生に次いで、高いオペ技術を持っている。
「ああ、戻りましたよ、小田切」
こちら側を向いて座る蓮見先生が私たちの姿に気づき、女性に声を掛ける。振り向いたその顔は予想通り、コバルト製薬のやり手MR、黒瀬依子さんだった。
いかにもモテそうなセミロングのかき上げヘア、隙のない化粧、意志の強そうなつり目がちの瞳。こんな人にロックオンされたら、落ちない男性はいないのだろうなぁなんて思う。
「お疲れ様です小田切先生」
「どうも、黒瀬さん。今日はなんのご用でしょう?」
ふたりが話し始めるのを横目に、私は自分のデスクでパソコンを開く。
今日立ち会った二件のオペ記録を書くためだ。記憶が新しいうちに、この目で見たこと、肌で感じたことを事細かに記さなければ。