独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「実はね、旭。……私、結婚したの」
「えっ……?」
「だから、帰るのは、その人と住んでるマンションなの。……ごめんね、食事の約束も、なかったことにしてもらっていいかな。彼に、いやな思いをさせたくないから」

 旭は大きな目を見張り、しばらく呆然としていた。昔から私のガサツさをよく知っている彼には、私と結婚っていう言葉が、あまり結びつかないのかもしれない。

「……そう、だったんですか」
「うん。ごめんね、なかなか打ち明けるタイミングがなくて」

 気まずい空気が流れるが、旭はしばらく目を伏せて何か考えた後、明るく笑って言った。

「じゃ、新居まで送りますね。どっちですか?」
「うん。こっち……」

 旭がひとりで帰れそうなら、これ以上一緒にいる必要はない。そうは思うのだけれど、食事を断った手前、これ以上彼の厚意を無下にするのは気が引けて、私は素直に道案内をした。

 旭はずっと沈黙していたが、マンションの前に着いたところで、建物を見上げながら口を開く。

「高そうなマンション……。やっぱり、不利だ。年下って」
「……不利?」
「僕だって、本気で愛花さんが好きなのに……」

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