独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
えっ。今、旭はなんて……?
苦しそうに私を見つめる旭は、幼いころから知っている彼とは別人のよう。
そんな彼が半歩距離を詰めてきて、私の頬に手を伸ばしかけた、その時。マンションから人が出てくる気配がして、旭はパッと手を引っ込めた。が、その人物を目にした瞬間、驚いたように瞳を揺らす。
その反応に思わず私も振り返ると、そこいたのは能面のような表情をした小田切先生だった。
「……ふうん。朝帰り、ね」
腕組みをしながら、淡々とした声音で言う彼。無表情なのにどことなく迫力があり、心臓が縮む。
朝帰りって……もしかして、なにか誤解している?
「なんで、小田切先生が?」
旭は状況を把握できない様子で、私たちの顔を交互に見つめる。小田切先生は鼻を鳴らして笑い、不愉快そうに話しだす。
「なんでって……夜通し病院にいたのであろう勤勉な妻がそろそろ帰ってくるかと思ってベランダに出てたら、あろうことか男と一緒に帰ってきたんだ。出てこずにはいられないだろう」
「妻……?」
突然明かされた私と小田切先生の関係に、旭が眉根を寄せる。