独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「違うんです小田切先生! 朝帰りなんてそんな……私、ずっとひとりで病院にいて!」
「いいわけは中で聞くよ。あ、きみは帰ってくれていいから。……というか、消えてくれる? 目障りだから」
強めの力で私の手首を握り、旭に向かって言い放った彼の声は、ぞくりとするほど冷徹だった。先日医局で言い合いをした時よりも、彼が激しく憤っているのを感じる。
憮然とする旭を取り残したまま、小田切先生は私をマンションの中へ連れていき、エレベーターに乗り込む。彼は終始無言だったが、ずっとぴりぴりしたオーラを纏っていて、声を掛けられる雰囲気ではなかった。
四階の自宅に到着すると、玄関に入るや否や彼は私を壁に追い詰め、顔の脇にダン!と手をつく。そうしてもう片方の手で、私の顎を掴み、自分の方を向かせた。
けれど、そこにあったのは怒りの表情なんかじゃなく、頼りなく揺らぐ、傷ついた人の瞳。
「……ねえ。お願いだから、ちゃんと俺だけ見ててくれない?」
切実そうに掠れた声音に、胸が苦しくなった。
不安なのは、私だけじゃなかった。そう気づかされ、今さらのように申し訳なさが募る。