独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「さ、仕事の話は終わり。自然の中で足湯に浸かれる公園に行こう」
「なにそれ! ますます癒されそう」

 純也が切り替えるように言うと、私の旅行気分も戻ってきた。今はどんなに仕事の心配をしたってすぐ病院に飛んでいける距離にいないんだから、楽しまなきゃ損だ。

 私たちは腰を上げ、手を繋いで駐車場に戻った。

 その後もいくつか観光地を巡った私たちは、夕方、純也が予約してくれた旅館にチェックインした。

 一般の宿泊客が泊まる本館とは別に、風情ある和風庭園の中につくられた離れが、私たちの部屋だった。

 ふたりでは持て余してしまうくらい広いスペースに、セミダブルベッドがふたつ、テーブルと座椅子のセット、庭に向けて設置された籐の椅子などがある。テラスには、専用の露天風呂までついていた。

 案内してくれた着物の女性従業員が部屋から出て行くと、私は庭にしつらえられた小川のせせらぎが聞こえてくる窓辺に近づき、感嘆する。

「こんなに贅沢なところ予約してたんだ。もしかして、旅行中に私の誕生日があるから張り切ってくれた?」

 そう言って隣に並んだ純也を見上げると、彼は得意げな笑みを浮かべる。

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