独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
医者としてできることはなくなってしまったが、俺は愛花と片時も離れたくなくて、彼女がICUに移動した後も、つきっきりでそばにいた。
華奢な彼女の手を握りながら静かに眠る顔を見つめ、俺は数日前、彼女と墓参りに行った日のことを思い出していた。
『長かったね。なにを伝えていたの?』
『……俺の顔って、愛花のお祖父さんの若い頃に似てますか?って聞いてみた。返事なかったけど』
あの答えは、咄嗟についた嘘だった。本当は……。
『どうか、愛花を長生きさせてください』
お墓の前で手を合わせた俺は、とうてい医者とは思えないそんな願いを、彼女の母親と祖母に真剣に訴えていた。
オカルトやスピリチュアル的なものを信じているわけではないが、同じ病でこの世を去ったふたりは、残された愛花やその家族をきっと心配しているはずで、もしもの時には守ってくれるんではないかと期待していたのだ。
しかし、あの時吹いた突風は、俺たちを冷やかすどころか警告していたのか、結局愛花はふたりと同じ病を発症し、倒れた。
ただ、発作を起こした時すでに病院のそばに戻っていたのは、彼女たちの思し召しだったのかな……。