独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「間もなくだと思うんだけど……」

 そう答え、四人で愛花に視線を注ぐ。すると、彼女のまぶたが俺たちの期待にこたえるかのようにゆっくりと開き、何度か瞬きをした。

「愛花……?」

 まずはお父さんが、おそるおそる声を掛ける。すると愛花は、天井をぼんやり見つめて口を開く。

「お母……さん」
「愛花? お父さんだぞ?」

 戸惑いながらお父さんが呼びかけると、愛花はゆっくり首を動かして焦点を合わせる。

「あ……お父さん」
「よかった……。出血の後遺症で、俺が母さんに見えるのかと思ったよ」

 このぶんなら、どうやら視覚に異常はないようだ。お父さんがベッドわきの丸椅子に腰掛けて彼女の手を握る。すると、彼女もそっと握り返した。

 意思を持って、なにかを握る。その行動ができることにも、俺は心から安堵した。脳に不都合があれば、そんな簡単なことすらできなくなるからだ。

 愛花はお父さんの手を握りつつ、お祖父さんと颯くんを一度ずつ瞳に映し、ふわりと笑った。

「お祖父ちゃん、颯……。やっぱり、こっちで合ってたんだ」

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