独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「こっち? なにを言ってるんだ? 愛花」
「ずっと、夢を見てた……。すっごく綺麗な花が咲いてる場所でね。遠くで、お母さんとお祖母ちゃんが私を呼ぶの。でも」
夢の内容を一つひとつ思い出すように、ゆっくり話す愛花。その瞳が不意に切ない色になった。
「いざふたりの近くに行ってみたら、私を呼んでたんじゃなくて、『来ちゃダメ』って怒られて……。そしたら、突然私たちの間の地面が裂けて、大きな川になったの。飛び越えられるような大きさじゃなかったから、結局お母さんたちの方には行けなかった」
「姉ちゃん、それって……」
颯くんがなにを言おうとしているのかは、俺にもわかる気がした。
それは、夢であって夢ではなかったのだろう。彼女のお母さんとお祖母さんは必死でこっちに来てはダメだと伝え、愛花を生かそうとしていたんだ。
「……そうか。お母さんたちが、守ってくれたんだな」
お父さんが目に涙を浮かべながらも、清々しい笑顔でそう言った。