独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「うん。……そうだと思う。でも……守ってくれたのは、純也も、だよね?」

 ふと、愛花がそう言って、一番離れた場所に立っていた俺を見つめる。彼女が目を覚ましてから、初めて視線が合った――ただそれだけで、胸が詰まったように苦しくなった。

 オペをしたのは自分でも、麻酔の切れる時間を知っていても。愛花がもう一度目を開けて、その瞳に俺を映してくれるだけで、こんなにも胸が震えるなんて。

「愛花……」

 名前を呼んで、一歩一歩ベッドに近づいていく。笑いかけてやりたいのに、目頭と鼻の奥が熱くなって、くしゃっと顔が歪んだ。

 そんな俺を見てお父さんが椅子から立ち上がり、「俺たちはそろそろ行こうか」と、颯くんとお祖父さんに声を掛ける。

「いいんですか? もう少し話を……」
「わしらはもう退散するよ。後は夫婦で仲良くやってくれ。まぁ、こんな場所じゃダイタンなことはできんと思うが」
「じーちゃん……時と場合を考えろよな」

 颯くんが鋭く突っ込み、「そうか、すまんすまん」とお祖父さんが適当に謝る。いつもながら楽しい早乙女一家のやり取りに笑みをこぼしつつ、ICUを出て行く三人を見送った。

< 206 / 224 >

この作品をシェア

pagetop