独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
くも膜下出血は、一度出血したらたとえ処置がうまくいったとしても社会復帰できるのは三分の一と言われている恐ろしい病だが、愛花は奇跡的な回復力を見せ、経過は良好だった。
「い、要りません!」
一般病棟に移ることができたその日、空いた時間に愛花の様子を見に病室を訪れると、ドアの前で彼女の大声が聞こえ、何事かと思ってドアを開けた。
「あら、こんにちは。小田切先生」
「純也……」
そこにいたのは真っ赤な顔の愛花と、お見舞いに来ていたらしい黒瀬さんだった。黒瀬さんの手には見覚えのあるチューブが握られていて、俺はなんとなく状況を悟る。
「愛花のお見舞いに来てくれたんですか?」
とりあえず目に入ったチューブはスルーして、ベッドに歩み寄りながら黒瀬さんに尋ねる。
「そうなんです。あ、小田切先生にもお礼を言わなくちゃ」
「お礼?」
「ええ。こんなこと言うの不謹慎かもしれないけど、早乙女先生が倒れて、そのオペを小田切先生が執刀なさったおかげで、私、蓮見先生にプロポーズしてもらえたんです。本当に、ありがとうございます」