独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「黒瀬さん、愛花は恥ずかしがってるんじゃなくて、本当に必要ないんですよ」
「と、言いますと?」
「だって、ちょっとキスしただけでいつもトロトロ――」
「~~~純也っ!」
愛花が真っ赤な顔で怒りの声をあげ、俺の言葉を遮った。ムキになる彼女に黒瀬さんはクスッと笑い、「お節介でしたね、早乙女先生」とウィンクして、チューブをバッグにしまった。
黒瀬さんが去ってふたりきりになったところで、愛花が少しモジモジしながら口を開く。
「ねえ、純也。黒瀬さんに聞いたんだけど」
「なにを?」
「まだ私たちの関係が秘密だった時……黒瀬さんに結婚のこと聞かれて、純也は『ただの契約結婚』って説明したって言ってたけど、あれって嘘だったの?」
……ん? いつの話だ? すぐには思い出せず首を傾げる俺に、愛花が説明を加える。
「ほら、蓮見先生が倒れた日。医局でケンカっぽくなって……」
「ああ、思い出した。愛花が西島と仲良くしてたのが気に食わなくて、咄嗟に嘘をついたんだ。ごめん」