独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
なんとなく不満だが、せっかくなのでたらふく食べてやろうと決め、座布団に座るなり私は食べたいネタを物色する。そんな私の横で、小田切先生が向かいに座る父に向かって話しだした。
「愛花さんからお聞きになっているかと思いますが、今日お伺いしたのは……」
「あ~、いいですいいです、堅苦しい挨拶は。小田切くんが素晴らしい人柄だというのは、愛花から聞いています。どうかうちの娘をよろしくお願いします」
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」
小田切先生が、かしこまって父に頭を下げる。
父は照れくさいらしく、「お~い颯、お茶はまだか」とキッチンへ引っ込んでいった。
ふたりきりになったところで、小田切先生がコソッと私に耳打ちする。
「お父さんに、俺のことイケメンとか人柄がいいとか話してくれてたんだ」
「……まぁ。その方が結婚の話が円滑に進むかと」
「ありがとう。実は褒められて結構うれしかったりする。愛花さんって嘘は言わない人だから」
ふわっと穏やかな笑顔を向けられ、わずかに鼓動の乱れを感じた私は、「いえ別に」と目をそらした。
なんだか、今日はいつもの彼と違う。白衣を着ていないせいか、私を先生と呼ばないからか……。
病院で常に纏っている緊張感がなく、肩の力が抜けた自然な表情をしている。