独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「寝顔ってなんですか? いつ見たんですか?」
「え? ちょっと余裕のある日の午後とか、たまにパソコン見ながら落ちてるよ」
「そういう時は眺めてないで起こしてください!」
思わず拳で小田切先生の肩を叩こうとするが、彼はそれを大きな手でパシッと受け止め、私を諭す。
「急がなきゃいけない場合はちゃんと起こすよ。でも、脳外科医は体力勝負だ。寝られる時に寝るのも大事。そうでなくても、愛花さんはいつも頑張りすぎだから、もっと休まないと」
思いがけず体調を気遣う言葉をかけられ、私は反論できずにしゅんとなった。
ハードワークぎみでも自分では大丈夫だと思っていたけれど、気づかないうちにうたた寝していたということは、小田切先生の言うようにもう少し意識的に休まないとダメなのかもしれない。
「いや~、姉ちゃんがそんなしおらしい顔するの初めて見ました。すごいっす、小田切さん」
私と小田切先生のやり取りを見ていた颯が、締まりのない顔でつぶやく。
「俺もだ颯。愛花がようやく女としての幸せを手に入れて、父さんはうれしいよ」
父まで感慨深げにそんなことを言うので、居心地が悪くなった私は思わず座布団から腰を上げた。