独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「あ~お腹空いた。早く食べようよお寿司。お祖父ちゃん呼んでくる」
むすっとしながら居間を出て、祖父の部屋に向かう。
私と小田切先生は愛のない契約結婚なのだから、今日の挨拶はもっと形式的で、よそよそしいものになるのかと思っていた。
でも、思った以上に小田切先生が〝お婿さん〟の振る舞いをしてくれるから、調子が狂うな……。そのおかげで家族が全然疑ってないのは、ありがたくはあるんだけど。
複雑な思いを抱えながら祖父の部屋のふすまを開けると、祖父は祖母と母の写真に向かって手を合わせていた。
狭い部屋なので仏壇を置くスペースはなく、小さなテーブルの上にふたりの写真と香炉、花だけを飾っている。祖父はよくそこでふたりに手を合わせ、家族の近況を報告しているのだ。
「お祖父ちゃん、そろそろお寿司食べよう」
「ああ、今行くよ。……どっこらしょ」
立ち上がった祖父とともに廊下を歩きながら、ふと気になって尋ねる。
「お母さんとお祖母ちゃんになにを報告したの?」
「うん? そりゃ、愛花の婿さんのことに決まってるだろう。俺の若い頃に似てハンサムなのに、生きて見られなくって残念だったなって」