独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 さっきも聞いた全然面白くない冗談をまたしても繰り返す祖父に、ガクッと力が抜ける。

「まだ言ってる。でもホント、もしも今ふたりがまだ生きてて、これから倒れちゃうんだとしたらさ……小田切先生に助けてもらえたかもしれないね」

 たらればの話をしても仕方がないけれど、小田切先生に出会ってから、時々、そんなふうに思う。

 彼のように腕の立つ脳外科医が母と祖母を診ていたなら、ふたりは助かったんじゃないかって。

「今さらなにを言ってるんだか。わしは、ふたりの敵を討つように、悲しみの中でも歯を食いしばって脳外科医を目指すことにした愛花を誇りに思ってる。お前は、その道をまっすぐ行きなさい。結婚してこの家を出たって、じいちゃんずっと応援してるから」
「お祖父ちゃん……」

 いつもとぼけたことばかり言う祖父からの思いがけないエールに、つい目頭が熱くなった。

 祖父にとって、妻である祖母と娘である母を亡くしたことは、想像もつかないほどの悲しみだったはずなのに……。やっぱり、長く生きてる人はすごいな。

 お祖父ちゃんの言う通り、私はひたすらまっすぐ、自分の信じた道を歩いて行こう。

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