独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「……ありがと」

 照れくさくて声は小さくなってしまったが、感謝の気持ちを伝える。

「どういたしまして、でもな愛花。これも忘れんでほしいんだが」

 居間のドアの前まで来たところで、祖父が思い出したように言う。

「うん?」
「ひ孫の顔、早めに拝ませてくれよ」

 わざとらしく声を潜める祖父に、ぎくりとした。結婚は愛がなくてもできるが、子どもはそうはいかない。私と小田切先生の間にできることは、100パーセントありえない。

「ま、まぁ、こればかりは授かりものだからね」
「そりゃそうだが、確率を上げるために夫婦で努力することはできるだろ? そうだ、小田切くんの方にもよく言っておこう」

 な、なんですと……?

「ちょ、ちょっと待って!」

 私は居間に入って行こうとする祖父の腕を、咄嗟につかんで引き留めた。

「なんだ愛花」
「そ、その……心配しなくても大丈夫! 小田切先生ってすっごく性欲強くて絶倫――」

 熱弁している途中で居間のドアが開き、あろうことか小田切先生本人と鉢合わせになった。

 ばっちり目も合ったが、互いになんとも言えない顔で沈黙する。

 も……もしかして聞かれてた?

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