独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
冷や汗をかきながら反応を待っていると、小田切先生はやがて何事もなかったかのように微笑んで言う。
「お手洗い、借りるね」
「は、はい。どうぞ……。あっちのドアです」
私はロボットのようにぎこちない動きでトイレの方向を指し示す。彼は「ありがとう」と言い、スッと私たちのそばを離れていった。
はぁ……聞こえてたよね。絶対怒ってるよね。こないだは変態呼ばわりで、今日は絶倫だもん……。
がっくり肩を落としつつ、祖父とともにお寿司の並んだテーブルについた。すると祖父がすかさず、父と颯に向かってひそひそ話す。
「小田切くん、あんな爽やかな顔して、夜はすごいそうだ」
「マジ? 仕事忙しいのに体力あんだな~」
「ほう。孫の顔が見れる日も、そう遠くはないか……」
まったくもう、うちの三馬鹿は好き勝手なことばかり……。
「いい加減にして! 家庭内セクハラ!」
大声で怒鳴りつけると、三人はびくっとして肩をすくめ、「すいません」と声をそろえる。
間もなく小田切先生がトイレから戻ってきて、ようやくお寿司にありつけることになった。
食事をしながら、さっきの件で彼が怒っているのではと横顔を盗み見る。
しかし、小田切先生は父や弟からの質問攻めにも、終始穏やかな笑顔で応じていた。