独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
食事会は十六時頃にお開きとなった。
「今日はありがとうございました。楽しかったです」
代表で玄関まで見送りに来た父に、小田切先生は丁寧にお辞儀をした。
「いやいや、こちらこそ。愛花、小田切くんを送ってあげなさい」
「あ、いえ。来る時に案内してもらったので、ひとりで帰れます」
小田切先生はそう言って遠慮するが、私はさっきの失言を謝りたいので、靴を履いて彼の隣に立つ。
「話したいことがあるので、送らせてください」
「……愛花さんがそう言うなら。でも、途中まででいいよ?」
「わかりました」
小田切先生が再度父に頭を下げ、私たちは並んで歩きだした。ノスタルジックな下町の風景は夕暮れに染まり、商店街の方からは、揚げ物やお惣菜のいい香りが漂ってくる。
早く彼に謝らなきゃなと思いつつ、なんとなく無言のまま歩いていたその時。
「愛花先生にさ、ふたつほど質問があるんだけど」
小田切先生が、のんびりした口調でそう言った。
呼び方が愛花先生に戻っている。父たちの前では、やはりそれらしく演技していたのだろう。