独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「なんですか?」
「……お母さんもお祖母さんも、くも膜下出血で亡くなってるって、本当?」
あ……父から聞いたのかな。そういえば、私の口からはまだ話していなかったっけ。
「本当です。ふたりとも、原因は脳動脈瘤の破裂。遺伝性だろうって言われました」
祖母は私が四歳の頃六十代で。母はその二年後に、三十代の若さで発症。ふたりが数年で立て続けに亡くなった頃の我が家は、それはもう暗かった。
「愛花先生は、それで脳外科医を目指そうと?」
「そうです。祖母、母ときたら次は自分だと、幼いながらに感じていました。……でも怖いという気持ちよりも、腹が立つ気持ちの方が強くて。『死んでたまるか! ふたりの命を奪った病のこと、知り尽くして勝ってやる!』……そう思って、医者を志すことにしたんです」
単純な発想だが、その気持ちは今でも変わらない。
怖いのは病気そのものより、無知であること。敵に勝つ術を知らないことだと思うから。
しかし、こんなふうに自分の心の内を同僚の医師に明かすのは初めてだ。
なんとなく気恥ずかしいものを感じてうつむき気味に歩いていると、不意に隣を歩く彼が足を止める。