独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 その日は美波ちゃんのことが気になり、オペの練習をしても集中できそうになかったので、仕事が終わってすぐに帰ることにした。

 自分のデスクで帰り支度をしていると、回診から戻ってきた小田切先生に物珍しそうな目で見られた。

「あれ? もう帰るんだ」
「ええまあ」
「なんか予定あるの?」
「別にないですけど」

 父と祖父の好きなドラマに付き合いながら夕飯を食べて、お風呂に入って、試験勉強をして、寝る。いつものルーティーンをこなすだけだ。

「じゃあ通用口のところで待っててよ。一緒に帰ろう」
「わかりまし……、え?」

 なにを言っているのだこの人は。一緒に帰る……? 昼間散々〝私たちの関係は秘密!〟と念を押したのに、まだ足りないか。

 あからさまに眉間にしわを寄せると、小田切先生が苦笑する。

「そんな嫌そうな顔しなくても」
「いや、だって、誰かに見られたら……」
「同じ診療科の同僚なんだから、一緒に歩いてたって別におかしくないだろ。じゃ、そういことで。すぐ終わらせるから、よろしく」

 彼は一方的に会話を終わらせ、デスクに向かう。

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