独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「いえ……。しかし、おふたりがお付き合いされていたとは知りませんでした。黒瀬さん、先日は小田切先生を合コンに誘ってませんでしたっけ?」
私がそう言うと、ふたりは視線を合わせて共犯者めいた笑みを浮かべる。
「ま、お付き合い……というか」
「暇つぶし、かな。私、本当は小田切先生みたいな男性がタイプなんだけど、全然振り向いてくれそうにないし」
……暇つぶし。で、あんなエロいキスを? ダメだ。まったく理解できない。
遠い目をする私をよそに、暇つぶしカップルは親密そうに会話を続ける。
「小田切はやめとけって。愛花先生も言ってたろ、仕事に欲情する変態だから」
「そのマジメさがいいんじゃない」
「悪かったねえフマジメで。……じゃ、俺は仕事に戻る」
蓮見先生はつまらなそうに言って、首をコキコキ鳴らしながら、廊下へ続くドアの向こうへ消えていく。
黒瀬さんとふたりきりになると急に気まずくなり、「じゃ、私はこれで」と階段を下りようとしたのだが。
「ちょっと待って早乙女先生」
「……はい?」
黒瀬さんは私のそばまでくると、肩から下げていたバッグの中を探り、洗顔フォームのような形状と大きさのチューブを差し出してきた。