独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
病院の敷地を出て、いつもの桜並木を家とは反対方向に進む。街灯の明かりに照らされた満開の夜桜が幻想的で、つい歩みが遅くなった。
毎年見ている景色だけれど、やっぱり目を奪われてしまうな……。
そんなことを考えながらぼんやり歩いていると、少し先を歩いていた小田切先生が私の名を呼んだ。
「愛花先生」
彼は歩みを止めて私の方を向き、なぜか手のひらを差し出している。
「なんですか? この手」
その手と彼の表情を交互に見て首を傾げると、彼は無邪気に笑って言う。
「つなごうってこと。一緒に夜桜見物」
「えっ。病院の近くでそんな危険なこと――」
小田切先生は私の言葉を無視し、勝手に私の手を取りギュッと握った。
「ちょ、ちょっと!」
ブンブン手を振って振り払おうとするも、固くつながれた彼の手は離れてくれない。
「大丈夫だって。近くには誰もいないよ」
「だからって……!」
こんな目立つことをされたら、夜桜どころではない。
私は思わず空いている方の手を使って、着ていたブルゾンのフードを頭にかぶった。彼はそんな私を見て、クスクス笑う。