独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「まるで指名手配犯だね」
「だ、誰のせいだと……! 笑ってないで早く病院から離れますよ。ほら、もっと早く歩いて!」
「はいはい」
気のない返事をする彼の手を引っ張るようにしてズンズン歩みを進め、桜並木を抜ける。
次の交差点で「どっちに行きますか?」と尋ねると、少し間があった後で、彼は「こっち」と左に伸びる道へと私を導いた。
やがて静かな住宅街に入っていき、あまり飲食店がある雰囲気ではないと思いつつも、人通りが少ないので緊張感は緩み、頭のフードを外した。
少しして、彼がひとつの建物の前で足を止める。正面の外壁に御影石を使った、重厚な印象の低層マンションだ。
「俺んち。ここの四階」
「へえ、そうなんですか……。って、えっ!?」
なぜ自宅に連れてこられたの? ご飯を食べに行くんじゃ……。
「絶対誰にも見られないって言いきれるのは、家しかないなぁって思って。スマホでなんか美味しそうなもの探して、デリバリーしてもらおう。ほら、入って」
「あの、いや、わたし」